弁護士に相談してみたいと思ったら
一般の方が弁護士に相談するには、自治体や法テラスなどの無料法律相談を利用する、各地の弁護士会が設置している法律相談センターの有料相談(一部、無料相談もあります)を利用する、法律事務所を訪ねて相談する(初回は無料相談とする事務所もありますが、大抵は有料相談となります)などの方法があります。
自治体等の無料相談について
ちょっとした法律問題についてアドバイスを受けたりトラブルとなっている問題の解決方法について弁護士の意見を聞いてみたいという程度でしたら、自治体等で実施されている無料法律相談に行ってみるのもいいでしょう。但し、大抵は予約制で相談者が多いため相談時間は20分程度しかないことが多いことを了解しておく必要があります。また、相談にあたる弁護士は自分が普段取り扱っていない分野についてもいきなり相談され短時間のうちに即答を求められるので、調査や検討が必要な問題では(自分の事務所でないため)判例や文献を見ることもできず相談者の期待するような回答ができないこともあります。また、20分程度の限られた相談時間では、相談者の方から相談の内容をお聞きするのが精一杯で、問題点を把握・整理してアドバイスをする時間がなくなってしまうこともあります。このようなこともご了解の上で利用して頂きたいと思います。
自治体等の無料相談では、弁護士は一度に多数の相談を次々とこなさなければならないこともあります。私も無料相談で約4時間に8人の方の相談を受けたことが何度もありますが、正直に言えば最後の相談者のころには相当疲れています(そのようなときは私が無愛想にみえるかもしれません)。
また、無料相談の後で、弁護士が「この点も説明しておけばよかった、調べてみたら参考となる判例があったのでお教えしたい」と思っても、今度は弁護士の方から相談者にアクセスするのが困難なことも多いのです。
ですから、複雑な事案や法律問題についての相談であれば、自治体等の無料法律相談はお勧めできません。
まずは、一般的、常識的なアドバイスを受けたい、その問題の解決に適する相談窓口を教えてもらいたいなどというときに利用するのがいいと思います。
弁護士会の法律相談について
私の所属している愛知県弁護士会も愛知県内にいくつかの法律相談センターを開設しています。これらの法律相談センターについては、愛知県弁護士会(当ホームページのリンク集にあります)に場所や予約方法などの説明がありますので、ご参照下さい。
弁護士会の有料相談の場合、借金の相談、離婚の相談、相続に関する相談、労働問題の相談、民事介入暴力に関する相談など、分野ごとの相談を選択することができます。但し、たとえば知的財産権、労使紛争、医療事故の相談などのかなりの専門性を要する相談の窓口は設置されていないこともありますので、ご注意下さい。
ちなみに、愛知県弁護士会の法律相談センターには医療事故相談の相談窓口はありません。私も所属している医療過誤事件を扱う弁護士の有志による医療過誤問題研究会が設置する医療事故相談センター(連絡先は当ホームページのリンク集にある「医療過誤問題研究会」をご覧下さい)が医療事故相談を受け付けており、法律相談センターに電話をしてもそちらを紹介されますので、医療事故相談センターの方に直接電話された方が早いでしょう。この医療事故相談センターの相談は、予約制で(予め相談したい医療事故の内容を記載した調査票を作成・送付して頂きます)、相談料は無料です(但し、予約を希望される日時によっては相談日時がかなり先になってしまうことはあります)。
相談費用は、各地の弁護士会によって多少違うことがありますので、予約の際に問い合わせをしておくとよいでしょう。ちなみに、愛知県弁護士会の場合は、一部無料相談もありますが、有料相談では30分で5,000円(別途消費税がかかります)です。
弁護士会の有料相談の場合、相談時間はきっちり30分ではなく多少の融通はききます。しかし、予約が立て込んでいて融通のきかないこともありますので、できるだけ資料を用意して要領よく相談できるようにしておいた方がいいでしょう。これについては、私のホームページの「業務内容」の各分野で相談に持参した方がよい資料を説明しておりますので、ご参考にして下さい。
この有料相談では、相談をした弁護士に事件の依頼をすることもできます。弁護士から名刺をもらって、その事務所へ電話して予約を入れるのが一般的な方法です。その弁護士の事務所で、事件の処理方針や弁護士報酬など委任契約の内容について十分な説明を受けた上で納得ができれば正式に委任することになります。
また、弁護士に直ぐにでも依頼したいという方は、弁護士会にその旨を伝えれば、弁護士を紹介してくれます。但し、まず紹介された弁護士に相談をして頂く必要があり、相談の結果紹介された弁護士が委任に応じる必要があります。ご相談の内容などによっては弁護士会が弁護士を紹介できないこともありますし、紹介できる弁護士の人数に(2人までなどという)制限があることもあります。この弁護士紹介制度については、各地の弁護士会のホームページをご参照頂くか、弁護士会にお問い合わせ下さい。
弁護士会の有料相談は、分野ごとの相談に分かれており、相談にあたっている弁護士はその分野について弁護士会の研修を受けたり自身で勉強もして同種の事件を扱っていることが多く、無料相談よりは信用できます。しかし、判例などの調査や検討が必要な相談の場合は、即答が困難なことは無料相談と同様です。そのような場合、相談をした弁護士に継続して相談したり調査や検討をしてもらうことも可能です。継続相談や調査については内容によっては相談料以外の費用がかかることもありますので、相談にあたった弁護士とよくご相談下さい。
法律事務所での法律相談について
法律事務所にまで出向くと、必ず事件を委任しなければならないと誤解している方もみえるようですが、別に相談のみで終わってもかまいません。委任を検討したいときは、委任契約の条件について弁護士に質問し説明してもらえばいいでしょう。私の事務所の場合は、このホームページの弁護士報酬基準などの記載をご参照下さい。
愛知県弁護士会では、弁護士会のホームページで各弁護士の取り扱い分野などを検索できるようになっています。それを使用して相談したいと思える弁護士を探して電話やメールをするということも可能です。
法律事務所での相談では、弁護士もその場で文献や資料を見たり判例検索などができることが多く、落ち着いて相談にあたることができます。相談者も、弁護士の都合などを聞いた上で、30分以上の相談時間を選ぶことができます。また、複雑な事案や法律問題では、弁護士はその場で即答できなくても、相談者からじっくり話を聞いて問題点を把握した上で、後日十分に調査、検討してその結果をご説明することができるという利点があります。
このようなことを踏まえて、弁護士への相談を考えている方は、ご自身の目的に見合った相談方法を選択して頂ければと思います。
実際にご相談やご依頼を受けてみると、「弁護士にもっと早く相談されていればこんなに苦しまずにすんだのに」と思うことも多々あります。とにかく、どんな方法でも早く弁護士にアクセスして頂くことが大切な事件もあります。
相談して弁護士に事件を依頼すると、「依頼者」と「受任弁護士」という関係になります。私は常々感じることですが、依頼者と受任弁護士は、仕事上の関係とはいえ、人間としての互いの信頼や(ときには)相性も必要なようです。裁判などでは、その関係が2年、3年と続くこともあるのです。相談者がご自身で「この弁護士なら事件を依頼しても信頼して付き合っていける」と思う人を選択すべきであり、弁護士の方も「この依頼者のためなら頑張れる」と思えてはじめて委任を受けるというのが理想です。
以上、ご参考として頂ければ幸いです。