離婚にはエネルギーが必要
離婚は一生の大事です。離婚には結婚の何倍ものエネルギーが必要となることが多いと思います。
離婚の原因は人それぞれであり、夫婦の関係も人それぞれです。
円満に離婚できる場合はいいのですが、そもそも冷静な話し合い自体ができない状況に陥るということもあります。
そのようなときには、第三者の力を借りることも本気で考えるべきでしょう。
私は、弁護士になってから、たくさんの離婚に関わってきました。依頼者の方が離婚を決意するまでには、様々ないきさつがあり、それは類型化などできるものではありません。私は、ひとつひとつの離婚について、調停委員や裁判官に理解してもらえるよう丁寧に訴えてきたつもりです。
依頼者にとっても、弁護士にとっても、離婚事件はエネルギーを必要とする事件です。そして離婚というゴールに達するまで、依頼者と弁護士の「二人三脚」がもっとも必要な事件であると思います。
離婚を迷っているとき
いろいろな理由により夫ないしは妻とどうしてもうまくいかず、「もはや一緒にいるのが苦痛だ。離婚しようか。でも、子供がかわいそうだ。子供のためには離婚しない方がいいのか。」などと悩んでいる方は多いと思います。
子供を片親にしたくはない、でも夫ないしは妻と一緒にいるのが辛い、というジレンマに陥ったまま、「子供がある程度自立するまでは」と自分を押し殺して結婚生活を続ける人も多いでしょう。しかし、そうすることが、かえって子供の成長によくないこともあります。
たとえば母親が父親から暴力や虐待を受けているとき、その姿を子供が見れば大変なショックを受けるでしょう。そこまでいかなくても、いがみ合っている両親のもとで育つ子供は幸せとはいえません。
自分にとって、子供にとって、何が一番いい選択なのかを冷静に考える必要があると思います。
迷っているときは、たとえば離婚や家族問題を専門とするカウンセラーのカウンセリングを受けるのもいいでしょう。カウンセリング料は安くはありませんが、気持ちを落ち着かせ、考えを整理するのに役立つことがあります。
悩み疲れ、睡眠不足になり、うつ病等になる方もみえます。そういうときは、思い切って精神科や心療内科の医師に相談した方がいいと思います。できれば家族病理に詳しい精神科の医師であるのが理想です。
残念ながら、離婚を迷っている段階で弁護士に相談して頂いてもお役に立てないことの方が多いと思います。弁護士は、心理学や精神科の勉強をしているわけではありません。また人生相談ができるほど人生経験が豊富なわけでもありません(希にそういう弁護士もいるでしょうが)。離婚をするための手続きや離婚をした場合の財産分与、慰謝料、養育費というような現実的な問題については法律家として意見を述べることができても、あなたやお子さんの人生にとって離婚した方がいいかどうかについては専門家としての意見を述べることはできません。
もちろん、離婚した場合に受けられる金銭給付などの現実的な問題についての知識も、離婚するかしないかの決断に影響を与えるでしょう。そういう意味でなら弁護士に相談するのはいいと思います。
ただ、結婚生活を続けられるかどうかは、パートナーに対して愛情や信頼を持ち続けられるかどうかにかかっているのではないでしょうか。この愛情や信頼についてまだ迷いや悩みがあるうちに弁護士に相談しても解決はつかないでしょう。
そういう段階にあるときは、弁護士ではなくカウンセラーや精神科医の力を借りる方がいいと思います。
そうして気持ちが落ち着き、それでもやはり離婚をしたい、離婚をする、と心が決まったら、そのときにはぜひ弁護士にご相談下さい。
離婚を決意したら
相手が離婚に応じてくれないとき、あるいは子供の親権、財産分与、慰謝料などで話し合いができそうもないとき、離婚は簡単ではありません。相手との闘いになるでしょう。しかし、終わりのない闘いではありません。先のことをくよくよ考える前に、今何をすべきかから考えましょう。そういうとき、弁護士は力になるはずです。一緒に闘ってくれる弁護士を見つけましょう。
あなたがまだ相手と同居しているときには、次のことに注意して下さい。
暴力や虐待があるときは、まず別居を考えて下さい。
相手から暴力や虐待を受けているとき、あるいは受けそうなときは、まずあなたとお子さんの身の安全を確保して下さい。
肉体的暴力があるときはもちろん精神的な虐待であっても、相手と一緒にいては危険です。
暴力や虐待を受け続け、相手の不条理な怒りを買わないようにと気を遣い続けることで消耗してしまい、別居や離婚をする気力もなくなってしまうこともあります。そうならない前に、まず第一に別居を考えるべきです。
経済的な理由等で直ぐに別居が無理な場合は、少しずつでも準備をしておくことです(但し、相手に知られないようにする注意が必要です)。
相手の暴力により怪我をしたときには、必ず医師の診察を受けて下さい。そして、医師には正直に相手の暴力による怪我であることを告げましょう。カルテは5年間は保存されます。後日、診断書の交付を受け、離婚の裁判の証拠とすることもできます。
緊急の肉体的危険があるときは、一刻も早く相談機関に相談して下さい。
内閣府男女共同参画局のホームページに相談機関一覧など様々な支援情報が記載されています。
相談や相談機関の紹介、カウンセリング、被害者及びその同伴家族の一時保護、自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助、被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助、保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助、をしてくれます。
保護命令の申し立てという制度もあります。
「身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(精神的暴力・性的暴力)」を受けている場合には、裁判所に申立てをして次のような保護命令を出してもらえます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律「DV法」)。
@ 被害者への接近禁止命令
A 被害者への電話等禁止命令
B 被害者の子への接近禁止命令(子が15歳以上である場合はその同意が必要)
C 被害者の親族等への接近禁止命令
D 退去命令
離婚を前提とする別居の前にやっておいた方がいいこと
相手から暴力や虐待を受けるおそれがないときは、別居前に相手のことをよく知っておいた方がその後の手続を有利に進めることができます。同居していても夫婦の関係が破綻しているときは、相手に対する関心も薄れがちです。
しかし、離婚となれば、その後の交渉、調停、裁判において、相手のことを知らないままでは戦えません。
相手に不貞があるときは、不貞の相手(住所、仕事先、家族関係等)、不貞の程度(交際期間や程度、子の有無等)について証拠を得ておいた方が有利です。
相手が不貞を認めないときはもちろん、不貞を認めていてもどの程度の交際だったのか裁判になったときに争われることもあるので、何らかの証拠が必要になることがあります。
手紙、携帯電話やパソコンの電子メール(プリントアウトしたり、携帯電話の画面を写真に撮っておいた方がいいでしょう)、日記、手帳、写真等も証拠となります。
但し、尾行等を興信所に依頼するときには注意が必要です。調査費用が高くて請求できる慰謝料などの金額以上だったり、きちんと調査をしない悪質な業者もいます。不貞に気づいて一時的にカッとなり興信所と契約をしてしまうと、なかなか解約に応じてもらえないこともあります。興信所に依頼するときは、落ち着いてから、興信所の説明をよく聞いて信頼できるかどうかを判断した上で契約をするべきです。
結婚してから夫婦で築き上げた財産(共有財産)や相手の収入・借金等についての情報や証拠も得ておきましょう。
共有財産は名義がどちらであっても財産分与の対象になります。これに対して、相手が親から相続した財産、相手の身の回り品(衣類、装身具等社会通念上それぞれの専用品とみられる物)、結婚前からそれぞれが所有していた物など(例えば花嫁道具)は共有財産にはなりません(特有財産といいます)。
共有財産については、ご自身の財産でもあるわけですから全て把握しておきまししょう。
預金、保険、株式などの有価証券等のリストを作成し、預金通帳、保険証券、株券等はコピーを取っておきましょう。預金などは、別居後に弁護士に依頼してから調査をすることも可能ですが、どこの銀行のどこの支店に預金があるのかをきちんと把握しておかないと調査が難しくなります。預金は過去に遡って銀行で取引明細を発行してくれますので、それを入手しておく方がいいでしょう。また、クレジットカードの使用明細、請求書等もコピーしておくべきです。相手に思わぬ借金があるかもしれず、また不貞や浪費の証拠となることもあるからです。
また、特有財産についても、あなたがその維持に貢献しているような場合には財産分与の対象となることもありますし、慰謝料の支払能力など相手の資力を知る上での資料となりますので、できる範囲で調査をしておきましょう。
但し、これらの調査は相手に知られないようにして下さい。知られることで、財産を隠される可能性もあります。
相手が相手名義の共有財産を売却したり、預金を隠したりするおそれのある場合には、裁判所に申立てをして、財産を保全してもらう方法もあります。
これには、現状の変更、物の処分の禁止等を命じてもらう調停前の仮の措置、また、審判の申立てをした上での審判前の保全処分、離婚裁判を前提として慰謝料や財産分与の履行を確実にするための民事保全手続があります。
調停前の仮の措置の申立てはご本人でも可能です(但し、裁判所の命じた措置に従わなくても、相手には過料が処せられるだけで、執行力ーたとえば命令に反した処分を無効とする効力ーはありません)。その他の手続きには執行力はありますが申立ては少し難しいので弁護士に依頼された方が無難でしょう。
相手がもうすぐ退職金などをもらうことが確実なときには、仮差押をしておいた方がいいこともあります。ただ、相手が勤務先にいづらくなるなど相手の損害も大きくなりますので、不動産や預金の仮差押に比べると要件が厳しくなり、離婚の判決を得て強制執行するまでに現在の勤務先を退職する可能性が大きいことなどの要件を充たすことが必要です。
別居後の生活の基盤を確保しましょう。
別居する前には、引っ越し先の住居、当座の生活費や弁護士に依頼したいときには弁護士費用を工面できるだけのお金を準備しておくことが必要です。生活していくためにはあなたも働かなければならないかもしれません。そのときは、子供をみてくれる親がいれば助かります。離婚の決着がつくまでは実家に戻るというのも一つの方法です。しかし、親がいない、親には面倒をかけられないという方も多いと思います。そのときは、引っ越し先を確保し、なおかつ子供を育てながら続けられる仕事を見つけることが必要です。親権が争われる場合には、子供を育てていくだけの経済力があるか否かということも親権者の判断基準になります。
いよいよ家を出るときに気をつけること。
別居することを面と向かって相手に伝えることが難しいとき(伝えれば暴力や虐待が予想されるようなとき)には、簡単な置き手紙などを置いておけばいいでしょう。相手に無用の心配をかけないための最低限のエチケットです。転居先などを教えたくなければ書かない方がいいでしょう。但し、実家や親族の家に移るときは、相手が追いかけてくることもありますので注意が必要です。
持っていく物、持っていかない物の判別は難しいところですが、嫁入り道具の家財道具、衣類、装飾品などは前記のとおりあなたの特有財産ですので、持って出た方がいいでしょう。離婚の決着がつくまで長くかかるような場合、これらの物を置いて出て行くとなかなか返してもらえないことがあります。できることなら全部持って出た方が無難です。
共有財産については相手も必要な家財道具もあるでしょうから、持ち出せば相手の怒りを買うこともあるので注意が必要です。しかし、子供を連れて出るときは子供の物(勉強机、鞄、教材など)は最低限必要ですから、持って出る方がいいでしょう。その他の共有財産については、できればどのように分けるかをよく話し合った上で、話し合いができない場合は双方に必要な物必要でない物をよく考えて、最低限必要な物は持って出た方がいいでしょう。
離婚の手続き
夫と妻の双方の話し合いで円満に離婚ができればそれにこしたことはありません。
離婚自体は、離婚届用紙に双方及び成年2人の証人が署名・捺印して、夫婦の本籍地または届出人たる夫、妻または双方の所在地の市町村役場に届け出ることによって成立します。但し、未成年者の子があるときは必ず親権者を決めて離婚届用紙に記載しなければならず、記載されていないと受理されません。
協議離婚自体は、離婚届を作成、提出して受理されれば成立します。しかし、協議離婚する際には、子供の親権だけでなく、財産分与、慰謝料、養育費についての合意もきちんと書面にしておいた方がいいでしょう。口約束でも合意は成立しますが、約束を守ってもらえない可能性もあります。証拠を取っておくためには書面を作成しておくべきです。但し、この書面は、調停が成立したときに作成される調停調書や裁判の判決とは異なり、たとえ書面に記載した合意内容を相手が守らなかったとしても、その書面に基づいて相手の財産を差し押さえることはできません。財産分与や慰謝料をお金でもらうときは、合意書を作成するのみでなく、できることなら分割ではなく一括で支払ってもらった方がいいでしょう。
相手がどうしても分割でなければ支払えないというときは、公正証書を作成しておくという手段もあります。公正証書を作成しておけば、分割の支払いが滞ったとき調停調書や判決と同様に相手の財産に対する差し押さえが可能となります。
また、将来にわたって支払われる養育費についても公正証書を作成しておくことが望ましいでしょう。
公正証書は公証人役場へ行けば作成してもらえます。
公正証書作成の必要書類や手数料はこちら(日本公証人連合会HP)→
具体的な取り決めについてなかなか話がまとまらないというときは、次に説明する家庭裁判所の調停を利用するという方法もあります。大筋では話がまとまっているのであれば、家庭裁判所に双方が1,2回出頭するだけで調停が成立することもあります。調停の場合、費用もかからず(次項参照)、調停調書作成の際には裁判官、書記官、調停委員が立ち会いますので安心です。ただ、家庭裁判所は非常に混んでいて、申し立てから第1回調停期日が入るまでにかなりの時間を要することが多いのが難点です。
離婚届が勝手に提出されそうなときは? 万が一、離婚の話し合いが終わっていないうちに、あなたが先に判子を押して渡してしまった離婚届やあなたの印鑑を無断で押した離婚届を相手が勝手に提出してしまいそうなときは、戸籍係に離婚届不受理の申出(用紙は戸籍係にあります)をしておくことができます(※)。勝手に離婚届が提出されそうなときはこの不受理申出制度を利用するといいでしょう。 ※ 不受理の期間は平成20年5月1日の改正戸籍法施行により「最長6ケ月」という期間が撤廃され、「不受理申出取下書の提出があるまで」とされました。 |
離婚を前提とする夫婦関係調停調停の申立ての
必要書類、費用等についての裁判所の説明はこちら→
申立書の記載例はこちら→
調停では、双方が別々の待合室で待機し、交互に調停室に入って調停委員から事情を聞かれます。相手の暴力などが怖いときは、予め家庭裁判所にその旨説明しておくと、廊下などでも顔を合わせないですむように配慮してくれます。
また、調停の席で一から話をしなければならないとなると、どうしても時間がかかってしまいますので、調停申立てに至るまでの経緯や離婚したい理由などについてあらかじめ書面を作成して提出しておいた方がいいでしょう。ただし、法律の改正により、その書面は原則として相手方も読むことが可能となりましたので、提出する書面の内容や表現などには配慮が必要です。
調停は通常1ケ月に1度位の割合で開かれます。しかし、相手が出頭せず、出頭する見込みも立たないときには不成立となります。相手を無理やり出頭させることはできません。調停は互いに妥協して解決点を見出せない限り成立しません。また、日本は調停前置主義を採用していますので、たとえ最初から調停の成立が見込めない場合でもいきなり離婚の裁判を起こすことはできません。
調停の手続自体は難しいものではありませんので、弁護士に依頼しなくてもご自身のみで可能です。しかし、一人で書面を作成したり家庭裁判所に出頭するのが不安だ、申立てをしたものの思うように調停が進まない、調停委員が自分の言い分を理解してくれない、というような場合には弁護士に依頼した方がスムーズに手続きが進むこともあります。また、相手が弁護士に依頼して法的な主張をしてきたような場合にはそれに対抗するためにあなたも弁護士をつけた方がいいでしょう。
調停期日に本人らが出頭して調停が成立すれば離婚は成立します。但し、報告のために、調停調書の謄本を添付して、調停成立の日から10日以内に市町村役場に届出をする必要があります。
調停成立の見込みがないときは、家庭裁判所は調停に代わって離婚の審判をすることもできます。
離婚のみでなく親権者、財産分与、慰謝料、養育費などについても審判は可能です。確定すれば判決と同様の効力を持ちます。
しかし、審判告知の日から2週間以内に当事者の一方から異議の申立てがあると当然に審判は効力を失います。このため、審判離婚は全国で1年間に50件程度しかなされていません。
審判に適する事件としては、
などです。
審判離婚の場合も、調停離婚と同様、審判書謄本と確定証明書を添付して、市町村役場へ届出をすることが必要です。
裁判はご自身で行うことも法的には可能ですが、現実には主張や立証に専門的な知識や技術が必要になるので、弁護士に依頼するのが通常です。
裁判の場合、調停と異なり、ご本人が必ず裁判所に出頭しなければならないわけではありません。出頭の必要があるのは、当事者尋問のときと、和解期日にご本人の意向をその場で確認したいときなどだけです。
しかし、弁護士はあなたの主張をまとめた書面(準備書面)を裁判所に提出しなければなりませんので、弁護士との打ち合わせは十分に行う必要があります。
離婚事件の場合、他の事件に比べて、客観的な証拠が乏しいことが多く、ご本人の主張(離婚原因、共有財産形成への貢献、慰謝料などにかかわる結婚生活中の体験など)を具体的に記載した書面を作成したり、細かな生活上の事柄などについても尋問をして、裁判官に分かってもらう努力をすることが大切です。
これらは、弁護士に任せておけばできることではありません。
弁護士とは、面談、電話、ファックス、電子メールなどを利用して、十分な打ち合わせができるようにしましょう。
以下では、知っておいた方がいい裁判の手続きについて簡単にご説明します。
裁判の前には原則として調停をしておくことが必要。
離婚の訴訟を提起する前には調停を経る必要があります。調停を経ないで訴訟を提起すると、家庭裁判所の調停に付されます。
但し、次のような場合は例外として調停を経ないでも直接離婚の裁判を起こすことができます。
相手方が生死不明、行方不明、心身喪失の状態にあるなど、裁判所が調停に付することが不適当と認めたとき
その他にも配偶者からの暴力がひどいため、調停という話し合いの場を持つこと自体が他方配偶者の精神状態に著しい影響を与える旨の医師の診断書が提出された場合に直接離婚の裁判を起こすことが認められた例があります。
どこの裁判所で裁判を起こしたらいいのか。
平成16年4月1日施行の人事訴訟法により、離婚の裁判が地方裁判所から家庭裁判所の管轄に移されました。
どこの家庭裁判所で裁判を起こすことができるのかについては、次のとおりです。
両当事者が直接裁判所に出頭することを要件に訴訟上の和解による離婚(「原告と被告は本日離婚する」との和解条項による離婚)も認められています。また、親権者の指定・財産分与などの附帯処分などを必要としない場合には当事者の出席を要件として「請求の認諾」も認められています。また、「請求の放棄」は当事者の出席を問わず擬制陳述によっても認められています。
但し、訴訟上の和解をするには未成年者の親権者指定と併せてでなければできないし、請求の認諾については親権者指定がある事件についてはできないとされています。
一定の事項について家庭裁判所の調査官による調査などが可能です。
子の監護権の指定・養育費の額などの「子の監護に関する事項」
「親権者の指定に関する事項」
「財産分与に関する事項」
については調査官による事実の調査が認められ、具体的な事案に応じた柔軟な証拠収集方法が可能となっています。
但し、事実の調査をするかどうか、するとしたらいつ、どのような時期になされるか、は裁判所の裁量によるとされてます。
調査の方法としては、調査官による当事者や子供の面接や心理テスト、関係者からの子供の日頃の様子の聴取、裁判所が当事者・関係者を直接裁判所に呼んで事情を尋ねる審問、裁判所から官庁や銀行などに対する照会などが考えれます。
なお、15歳以上の未成年者について親権者指定、監護者指定などをする場合には子の陳述を聴かなければならないとされています。
参与員が関与することがあります。
裁判所が必要があると認めるときは、参与員(民間人)を審理又は和解の試みに立ち会わせて、事件について意見を聞くことができます。
これは国民の良識を反映させるための制度とされています。
当事者尋問などの公開停止が可能です。
私生活上の重大な秘密にかかるものについては、当事者尋問などの公開停止ができることがあります。
公開停止には次のような要件が満たされる必要があります。
離婚問題法律相談ガイドブック 2006年
(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会発行)
新人事訴訟法 要点解説とQ&A
(新日本法規出版株式会社発行)
池内ひろ美の離婚相談所
(日本実業出版社発行)
離婚のご相談の際にご用意頂いた方がよいもの
離婚のご相談の場合、相手方と知り合った経緯から離婚をしたいと思うに至った経緯まで、詳しくご事情をお聞きすることになります。
30分や1時間で全ての事情をご説明頂くことは事実上無理なので、できるだけ詳しい経緯を書面(時間がなければ箇条書き程度のものでも)にしてご持参頂くと、相談時間を有効に使うことができます。
また、夫婦の共有財産のリスト、不貞の場合は興信所の調査報告書、暴力や虐待のある場合は診断書、暴力や虐待の事実を記録したメモなどもご持参頂くと、有意義な相談が可能となるでしょう。
私の場合は、お電話を頂いた際に、簡単にご事情をお聞きして、相談当日ご持参頂いた方がよいものをアドバイスさせて頂いております。
当事務所の離婚事件の弁護士報酬基準
弁護士の報酬は現在は自由化されておりますので、弁護士ごとに報酬基準が異なります。当事務所の弁護士報酬基準は、次のとおりです。
1.離婚のみ
着手金 | 報酬金 | |
交渉事件 | 20万円〜50万円 | 同 左 |
調停事件 | 20万円〜50万円(※1) | 同 左 |
訴訟事件 | 30万円〜60万円(※2) | 同 左 |
※1 交渉から調停を受任するときは、10万円〜25万円
※2 調停から訴訟を受任するときは、15万円〜30万円
調停事件の場合、当初から調停の成立の見込みが全くないと判断されるときは、着手金を受任時5万円、調停期日1回につき3万円とさせて頂くこともあります。
2.財産分与及び慰謝料のみ
着手金 | 報酬金 | |
交渉事件 | 一般民事事件の報酬基準と 同じ |
一般民事事件の報酬基準と 同じ |
調停事件 | 同 上(※1) | 同 上 |
訴訟事件 | 同 上(※2) | 同 上 |
※1 交渉から調停を受任するときは、2分の1に減額
※2 調停から訴訟を受任するときは、2分の1に減額
3.親権及び面接交渉のみ
着手金 | 報酬金 | |
交渉事件 | 228,000円 〜468,000円 |
457,300円 〜849,000円 |
調停事件 | 228,000円 〜468,000円 (※1) |
457,300円 〜849,000円 |
訴訟事件 | 343,000円 〜637,000円(※2) |
686,000円 〜1,274,000円 |
※1 交渉から調停を受任するときは、2分の1に減額
※2 調停から訴訟を受任するときは、2分の1に減額
4.養育費及び婚姻費用のみ
着手金及び報酬金合計
月額×12ケ月×5年間(受領期間が5年間より短い場合はその期間)
を経済的利益として、一般民事事件の報酬基準による。
5.1〜4が競合している場合
紛争の実態が共通する限度で合計金額を減額する。
なお、上記報酬には、別途消費税がかかります。
上記報酬基準は概略です。
具体的な事案の内容や依頼者のご事情によって調整しますので、ご依頼時にご相談下さい。