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証拠保全関連

2006年6月10日 (土)

 証拠保全とは、医療過誤の疑いがある場合に、患者側が証拠となるカルテなどの廃棄、紛失、 隠匿、改ざんを予防するために、カルテなどを確保しておくための裁判上の手続である。

  証拠保全の期日(検証期日)には、通常は病院でカルテなどのコピーを取らせてもらうのだが、この期日に裁判所が病院からカルテなどの原本を借りて、裁判所でコピーを取ることもある。これは、カルテなどがあまりに膨大で、とても数時間ではコピーを取りきれないという場合であることが多い。
 そういう場合は、病院も長々と裁判官や弁護士に居座られるよりも、カルテを貸すからそちらでコピーをしてちょうだい、ということもあって、裁判所が預かり証を出せば快く貸してくれることが多い。

  昨日は、そういう証拠保全で裁判所が借りた膨大なカルテや画像を、裁判所の準備手続室でチェックし、そのうちどれだけ謄写にまわすか、どの画像をデュープ(原本の画像と同じように専用の機械でコピーすること)するかを決める作業をした。

 患者の方の中には、証拠保全でカルテのコピーを直接入手できると誤解されている方もおられるようだが、そうではなくコピーは裁判所がするものであり、そのコピーを弁護士会の謄写室というところで再コピーしてもらって、ようやく患者側は再コピーを入手できるのである。
 実は、弁護士会の謄写室で再コピーしてもらうと、愛知県弁護士会の場合コピー代が1枚45円程度(※1)かかってしまうのである。これは謄写室の事務員の給与、コピー機などの経費がかかるので仕方がないのだが、患者側には相当の負担となる。
 また、画像のコピーも、デュープだと大きさにもよるが1,000円位かかることが多い(※2)。これをシャーカステンにのせて写真で撮るだけなら、3分の1以下の金額ですむ。
 それで、なるべく謄写やデュープにまわすカルテや画像を必要なものだけに抑えようと、昨日はその選択に3時間もかかってしまった。 膨大なカルテや画像を全部謄写やデュープにまわしてしまえば代理人の弁護士としては楽なのだが、それでは患者の経済的な負担が大変なものになってしまう。必要最小限のものに限るというのは、結構苦労が多いのだ。 

 昨日は、梅雨入り後のせいか、大変蒸し暑かった。裁判所は、冷房は28度が限度。これは暑がりの私にとって、相当きつかった。 依頼者の希望で実費は20万円以内に抑えてほしいということなので、頑張ってみたのだが、どうだろうか。
 弁護士は、結構こういうお金のことで気を遣わなければならない職業なのである。 

 個人情報保護法の施行以来、証拠保全の依頼は減っている。個人情報保護法の適用を受けない医療機関でも、任意にカルテを開示してくれることが多くなった。個人情報保護法による開示は、患者にとって証拠保全よりも費用がかからない。弁護士としても、正直証拠保全は前記のような苦労もあり必ずしも採算のあう仕事とはいえない。コピーをしなければならない裁判所の書記官や事務官も大変である(カルテにはたくさんの検査票がぺたぺたと貼り付けてあり、これを1枚ずつめくってコピーする苦労は並大抵のものではない)。 しかし、それでも証拠保全をしてほしいという方はみえる。やはり、個人情報保護法による開示では、カルテの隠匿、改ざんの可能性があると心配されるからである。

 また、個人情報保護法による開示では、必ずしも全てのカルテなどのコピーがきちんと交付されるとは限らない。故意ではないとは思うが、患者がコピーをもらってきたカルテ、検査記録、画像などの一部が抜けていることが少なからずある。

 証拠保全の場合であっても、検証期日に弁護士がカルテをチェックすると、あるべき検査記録や画像が抜けていて、その場で病院側に尋ねると、「探したらありました。」ということがあるのである。
 
 私が、実際に経験した例では、大病院で産科の証拠保全をしたところ、検証期日にカルテはきちんと用意されていたが、あるべきNST(分娩監視記録)が全くないということがあった。NSTは産科事案では最重要ともいえる証拠である。これが出していなかったのが故意であったか否かは不明だが、私が言わなければそのままだったろう。
 だから、素人の患者が、病院に個人情報保護法に基づきカルテなどのコピーを求めても、重要な一部が抜けているということもあり得るのである。
 個人情報保護法施行後も、やはりきちんと証拠保全をしておいた方がよい事案はあると思う。

※1 2016年10月時点の愛知県弁護士協同組合の謄写料は1枚44円(白黒)。
   http://www.aibenkyo.jp/untitled41.html
    カルテの量が多いと、この謄写料がばかにならない。

※2 その後、画像データをCDにコピーして交付してくれる医療機関が増えた。
   その場合は、デュープよりも格段に費用は安くなる。
 

2014年5月21日 (水)

 きょうは、午前中から証拠保全だった。
 相手方の病院のカルテは電子カルテ。診療期間が長いのでカルテのプリントアウトに時間がかかることは覚悟はしていた。
 しかし、プリントアウトされたカルテというのは、A4サイズの紙に3分の1以下しか印字されていないものが殆ど。2,3行しか記載がないものも多かった。
 これでは、プリントアウトに時間がかかるはずだ。
 しかも、これで、患者に一律1枚20円請求するという。
 その他にも、同じカルテを膨大な量、二重にプリントアウトしたり(その間の待ち時間は全くの無駄)、最も重要なカルテを一番最後に(裁判所が帰り支度をしているときに)提出してきたり。

 こんなことは、病院にとっても、患者にとっても、プラスにはならないだろう。

 あまりの腹立たしさに、久しぶりにキレてしまった。

 カルテのコピー代がいかに患者の負担になるかなんて、病院も裁判所も「知ったことか」というのが現実だ。

 しかも、これから裁判所の作成する検証調書(カルテのコピーも含む)を弁護士会の協同組合を通して患者側は謄写申請するのだが、その謄写料が1枚40円(※)。私は、この謄写料が高すぎると抗議したことがあるが、なんでも遠方の支部へ謄写のために職員を派遣するのに要する経費を併せると、この位の謄写料としなければ採算が取れないのだそうだ。私は、この説明に納得したわけではないが。

 こういうことのために、カルテが多いときには、患者側のもとにコピーが届くまでに本当に多額の費用がかかってしまう。

 これが証拠保全の現実。

※ 2016年10月時点の愛知県弁護士協同組合の謄写料は、正確にはA4モノクロ1枚44円、カラーだとA41枚80円、A31枚100円。

             

私のブログ「弁護士のため息」の  医療過誤関連の記事抜粋